年下くんの甘い毒。
彼が言う三年前の話ではない。
つい何十分か前の表彰式で、やけに私のことを見てくる人がいるなと思っていた。
「君、大橋健斗くんだ」
「僕の名前覚えててくれたんですか!?」
大会で優勝するくらいの人の名前は自然と耳に入ってくる。
だから別に彼が特別というわけじゃなかったんだけど、パァッと瞳を輝かせた。
「じゃあ約束も覚えてますよね?」
「いや、それは…」
正直一つも覚えていない。大橋くんの存在も、期待の新星だと騒がれていたから知っていただけだし。
まさか中学のときに告白されていたとは。
「本当に忘れたんですか…?僕、あれからめちゃくちゃ練習頑張って、やっと優勝出来たのに…」