隣のキケンな王子様!
「このまま一人で行くっていうのもアリだけど……やっぱりちょっと寂しいよなぁ」
かと言って、亜矢子カップルにおじゃまするわけにもいかないし。
今から誰か誘っても、女子の準備にはそれなりの時間がかかるし。
男子で誘えるような人も……
「わっ! き、消えろっ!」
瞬間、空中に浮かんだお隣さんの顔をあわててかき消していると、そばに立っていた男子グループに嘲笑されて。
「か、帰ろうっと」
開いたドアから逃げるように飛び降りて、反対側の電車に駆け込んだ。
花火大会の会場とは逆方向に進む電車に浴衣姿の子はあたし一人だけで、何だかちょっと浮いている。
「……あーあ。またこんな感じかぁ」
電車の隅に移動したあたしは、夕焼けが大きく広がった空を眺めて、ちっちゃくため息をついた。