隣のキケンな王子様!
郁己くんはあたしを抱っこしたまま、ロープの横をさらに奥に進んだ。
茂みの中から、夏の虫が鳴いているのが聞こえてきて。
手つかずの緑が、この場所に入る人の少なさを伝えている。
「降ろすぞ?」
「あ、うん」
足に負担がかからないようにそっと降ろしてもらった場所は、そんなに高くはないけれど、町を一望できるポイントだ。
「あっ!」
そして、ビルを避けるようにして、丸いままの花火が上がっているのが見えた。