隣のキケンな王子様!
腕をつかまれて立ち上げられたあたしは、郁己くんから離れようとした。
でも、腰に降りてきた腕がそれを許してくれなかった。
「戻るぞ」
首を振って「イヤイヤ」をすると、
髪にまとわりついていた雨水が飛んで、郁己くんの白いTシャツにシミを作った。
……まるで、怒られた子ども。
唇を噛んで、そのシミをじっとにらみつけているあたしの髪を、
「風邪ひくから。……な?」
優しい指が通り抜ける。
「風も強くなってきたし。雷も鳴りそうだぞ?」
腕の血管に沿うように、あたしから郁己くんに伝う冷たい水。
「雨が上ってからにしろ」
その水を眺めながら小さくうなずくと、
「……こんなに濡れて。バカだな」
冷えた体は、温かい腕で包まれた。