隣のキケンな王子様!


「あ……」



まだ、雷は続いている。


風に吹かれて窓を叩きつける雨の音は、怪獣みたいな声を出していて。


部屋はもちろん真っ暗で。


一帯が停電になっているせいか、外からの明かりも入りこんでこない。



「い、郁己くんっ……」



思わず伸ばしてしまった指先は、視界から消えそうになるシルエットにかろうじて届いた。



「ん?」


「あたし……その、懐中電灯なんて持ってない」



言い訳みたいだって、頭の片隅で思ったけど。


誰かがそばにいてくれなきゃ、怖い。



だって……指輪がない。


お守りがない。


王子様が、守ってくれない。



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