隣のキケンな王子様!
「あ、いえ……何でもないんです」
「そう? あの後さ、駅からものすごいスピードで引き返していったんだよね、郁己。
あの子にしてはめずらしく怖い顔してさ」
「そう……だったんですか……」
……そんなに心配してくれてたんだ……郁己くん。
ため息をつきながら、あたしは握りしめていた手のひらを開いた。
他の人にとっては、どうってことのないおもちゃの指輪。
でも、あたしにとっては宝物。
失くしたはずのそれがこうして戻ってきたのも……
きっと、郁己くんが探してくれたからだろう。