隣のキケンな王子様!
「ん? あ、郁己からだっ」
お姉さんのケータイが鳴り出した。
「もしもし? ちょっと、あんたどこにいるの? 電話にも出ないでっ。
友達って? ああ、ユキヤくんのとこ? あのさ、あたし忘れ物しちゃって○※×……」
まるでそれが郁己くんの耳みたいな勢いで、ケータイに向かって声を荒げている。
押し問答みたいな会話を終えたお姉さんは、呆れた顔をしてため息をついてから、
「郁己、友達のところにいるんだって。何か取りこんでるみたい。
ったく、しょーがないなー。
ここからそう遠くないんだ、その子のアパート。あたし行ってくるね」
軽く手をあげて、玄関を出ていこうとしている。