隣のキケンな王子様!


「あっ、あのっ、待って」



おもわず伸びたあたしの手は、その腕をがっちりつかんでいた。



「うわっ、なに? 由梨ちゃん」


「もう少しっ……くわしく教えてくれませんか……?」


「え? なにを?」


「昔のこと……、引っ越す前のこととか、その後のこととか」



だって、あたしの中の記憶は、いろんなことが欠けている。


鮮やかに覚えているのは、王子様の存在だけで……。


もしかしたら……もっと大事なことを忘れてるのかもしれない。



あたしたちの間で、いったい何があったの……?



あたしと郁己くんの、


思い出に対する感情の温度差は……どこから来てるの?



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