隣のキケンな王子様!
「お願いしますっ。教えてください」
あっけにとられた感じのお姉さんだったけど、
「なんか、郁己が帰ってないのも理由がありそうだね」
静かにほほ笑んでから、あたしと亜矢子の背中を押して部屋に運んでくれた。
「えっと……どこから話そうかな」
幼いころの出来事を、ゆっくり、くわしく話してくれる間、
あたしは、頬に流れる涙を止めることができなかった。
「由梨……大丈夫?」
頭や肩を、亜矢子に撫でてもらいながら、
甘くて、切なくて、苦しい真実に、耳をかたむけた。
忘れていた記憶を……
少しずつ、呼び起こしながら。