隣のキケンな王子様!
「ごめんね。助けてもらったのに、あんなこと言って……」
言葉が続かなくなったあたしは、小さな息を吐いて、うつむいた。
少しだけ流れた沈黙を、さわりと吹いた風が、静かに連れ去っていく。
「……郁己くんが……お隣さんだったんだね」
小さくつぶやくと、
「……姉貴が話したのか?」
「うん……」
「ったく……おしゃべりなヤツだよな」
腕を組み直した郁己くんは、あたしに似たため息をついた。
そして、
「でもオレは、王子じゃねーよ」
「……うん。分かってる」
「……それも聞いたのか」
「うん……」
視線を合わせたあたし達は、何かを言いたくて、でも言葉が出てこなくて。
何度目かの風が通り過ぎたとき、
額に手を当てた郁己くんのカラダが、ブロック塀に沿うようにして崩れ落ちた。
「……郁己くん?」