離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「いえ、文句ばっかり言ってすみませんでした。大丈夫ですちゃんとやります」
滝沢さんと話がてらの休憩だったが、改めてパソコンに向かって座りなおした。もうじき取引先に出かけている社長も戻る時間だし、せめて今作成している書類だけでも仕上げてしまいたい。
「いやいや、元々が無理な話だから。入社して数か月で辞められちゃ困るから。ってか、けど富樫さんほど事務処理正確で速い人材探すのも……」
「あ……でしたら、私がこっちを担当して秘書業務の方を募集したらどうですか。私もその方が仕事がやりやすいです」
単純なもので、仕事を褒められてちょっと気を良くしてしまう。話しながら調子よくキーボードを叩いていた、その時だった。
真後ろ、本当にすぐ近くからぼそっと低い声がした。
「……そんなに俺と仕事するのを嫌がらなくても」
「うわっ!」
不意打ちの低音ボイスが、あまりに近くで耳に響き、ぞわぞわぞわっと背筋がこそばゆくなった。