離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
 選んだのは残り三か月間、新居を探したいという彼女に合わせながら、少々強引にでも関わりを作り距離を縮めるということだった。

 三か月の間に彼女の意識を変えられなければ、その時は自分の不甲斐なさを認めゼロから正攻法で始めるしかない。
 彼女の様子を見ていれば、一筋縄ではいかないだろうが。そう思うと、ますます惜しくなる。気が焦る。なんなら、酔った勢いで強引に意識させてしまおうとかとその夜はわざと酔わせたりもしたが、自分の浅はかさ加減に自己嫌悪した。

 酔って意識のない彼女を部屋まで運び、ベッドに横たえる。室内は暗く、廊下からのわずかな灯りが彼女の寝顔を照らした。

 仄かに桜色に染まる頬にかかる陰影は、劣情を煽るのに十分な色気と無防備さを持っていて、慌てて灯りを付ける。


「……う、ん」


 眩しかったのか、それとも気分が悪いのか。小さな唸り声を上げた。眉を寄せて苦しげだったが、すぐに聞こえ始めた寝息にほっとして頬が緩んだ。触れたいと思う。

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