離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
 滝沢は、俺が就職はしないで起業したいと言った時、楽しそうだと笑ってついて来てくれたいわば同志だ。滝沢なら難なく一流企業に就職することも出来たはずなのに。

 高校大学と同じで、彼にはうちの家庭事情もかなり知られている。俺は六人兄弟の一番上で、後に続く弟妹のことを考えると自分の進学で両親にあまり負担はかけられなかった。
 正直、もうちょい計画的には出来なかったのかと言いたかったが、まあ言っても詮無いことだ。だから最初から頼るつもりはなく、高校生のうちからバイトで金を貯めて進学費用に充てた。その間、多少グレたりもしたが若気の至りの笑い話で済む程度だ。滝沢とはその頃からよく遊んだし、バイトを一緒にしたこともある。

 気持ちの良い人物だし、無条件に信頼している友人でもあった。が、だからといってそれとこれとは話はまったく別なのである。


「いずみさんって、変に気を遣わずに済むし肩の力が抜けるんだよなー。女っぽくないというか、かといって粗野ってわけでもないし。だからつい、気楽に酒に誘っちまって」


 聞いていると、どうやら女性として見ているという感じではないように思う。


「……いずみは女らしいところもある」
「誰も女らしくないとは言ってないだろ。けど仕事の面では男前というか潔いところがあるというか」
「それはな。確かに」


 そんなところが、最初は好ましかったのだが。今はまったく手ごたえがなくて絶望的だ。どうしてこう、願った人物に限って。

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