離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「瀬名にとっては貴重な人材だよなあ」
「そうだな」
公私共に、失うわけにはいかない人材だ。慎重に捕まえなくてはならない。
「ああ、そういえば」
滝沢が、ふと何かを思い出したように話を変えた。
「マヤちゃん、あれからどうだ? 落ち着いたか」
「あー、どうだろうな、しょっちゅう電話は来るよ。前みたいに泣いちゃいないが」
麻耶とは、実家の隣に住んでいる同い年の幼馴染のことだ。しばらく疎遠だったが、半年ほど前急に連絡があった。ちょうど、今のように滝沢と飲んでいる時だった。
高校は俺たちとは違ったが、滝沢はよく家に出入りもしていたので麻耶とも当然面識がある。
「マリッジブルーってやつか? 結婚が近くなって不安定になってるみたいだな」
「結婚相手が仕事人間であまり会えないんだっけ?」
「ああ、そう言ってたな」
「麻耶ちゃん、困ったら一番に瀬名に頼るのは変わってないなあ」
どうも、旦那になる男と麻耶とでは気持ちの温度差があるらしい。そういやいずみと俺がまさにそれだな、と気がついてしまった。
「結婚するんだから、俺じゃなくて旦那に甘えろって言ってるんだがな」
なんて噂をすれば、テーブルに置いていたスマートフォンに着信がある。通知画面に麻耶の名前を見た。