離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
 そういや、うちの場合はどうなるだろうか。籍を入れたことを家族には知らせていない。仕送りはしているが、会社に関することに実家は一切かかわろうとはしないから、社内や取引先の間では知られていても家族は知らないままだった。
 万一知られたら、会社の都合で既婚を装っただけだと誤魔化すつもりだったのが、三年結局バレずにここまで来たが。

 いずみがこのまま夫婦でいてくれるなら、ちゃんと紹介しなければ。式はどうでもいい気がするが、いずみのドレス姿は見てみたい。
 いや、しかしいずみは嫌がりそうだ。
 そこまで考えて、はたと気づく。まだまったく男として見られていないのに先走り過ぎだと自嘲した。

 店の中で待っている滝沢の元へ戻ると、にやにやと俺を見て笑っている。


「麻耶ちゃん、どうだった」
「どうもこうもねえ……さすがにこの年であの思考回路はないな」
「そうは言いつつ、見捨てられないくせに」
「突き放したら厄介なのもわかってるからだよ」


 相変わらず嫌な笑みを浮かべる滝沢の視線を遮るように、手を横に振る。料理もすでに残っておらず、時間も遅くなっていたのでそのまま会計をして店を出た。


 関係を変えるために、まずは今までしなかったようなことをした。例えば、これまで敢えて入れていた平日の付き合いを減らして帰宅時間を早める。すると、彼女も異変に気付き戸惑いながらも、これまでしなかったことをした。
 滝沢とふたりで飲みに行くから遅くなる、とわざわざ連絡があったのだ。


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