離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
 ところが。


「だめ、呼ばなくていい」
「えっ」


 まさかの即答。


「でも、滝沢さんも食べたいって言ってましたし」
「一回作って成功させてからの方が良くない?」
「失礼な。初めてでもそこまで変な味付けにはならないです」


 味付けはおでんのダシと同じようなものだから、濃いか薄いかの差は出てもそう不味くはならないはずだ。

 今夜のおかずだって和食で、手の込んだものではないけどまあまあ普通の手料理を用意した。和也さんが! 食べたいって期待の目で見るから! 
 美味しいって言ってくれたから、料理の腕はそこそこ信用してくれても良さそうなものなのに。

 むっと唇を結んで和也さんを睨むと、彼はちょっと困ったように眉尻を下げて笑った。


「そんなに嫌?」
「何がですか」
「俺とふたりきりになるのが」


 図星を直球で突かれて、ぴきっと固まってしまった。

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