離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
和也さんの目が、じっと私を見つめる。内面を覗き込むようにして。
そんな風に見るから嫌なのだ、と言いたい。急に近くなった距離感にも戸惑うけれど、それよりも何よりも、こうやって私の気持ちを探ろうとする。それだけじゃなく、気持ちをストレートにぶつけてくる。
それが、いやだ。
「……いやです」
「なんで? 前はそんな態度じゃなかった」
「だって、それは、和也さんだってそんなんじゃなかったじゃないですか!」
しどろもどろの言い訳は、最後はやけくそみたいに声が大きくなった。かあっと顔が熱くなって、汗が滲み出てしまいそう。
「そういうこと言われるの、慣れないんです! 前はそんな、甘い言葉とか言わなかったし、見つめたりしなかったし……っ」
早口だけど恥ずかしさのあまりに小声でまくし立てて、一層恥ずかしくなってそれ以上言葉が出なくなった。無理やり言わされたような気がして、恨めしくなって涙目で和也さんを睨む。
すると、彼の方はぽかんと口を開けていた。
「だ、誰とも付き合ったことがないとは言わないけど、そんな甘ったるい顔する人、いなかったし……っ」
慣れていないのだ、そういう、気持ちを交わすようなやり取りを。それに、こっちはまだ離婚したくないと言われて数日しか経っていない。戸惑い真っ最中なのに。
その戸惑いを隠すことも許さないくらいの和也さんの視線から、逃げたいと思って何が悪い。
開き直って言い切ると、驚いていた和也さんの顔が一瞬緩んだ。すぐに、その口元を自分の手で隠してしまったけれど。