離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「違う違う! そういうんじゃないけど」
そもそも誰か相手がいても、浮気がどうのと言える関係ではないのだけれど。この疑いをそのままにしては、瀬名社長の印象が悪くなってしまう。
「だよねえ。社長、今やいずみさんにベタ惚れって感じだし」
返ってきた言葉にも、首を傾げるものだったけど。
「いや、なんでよ」
「違う? でも、そう見える。元々、結婚した当初からいずみさんより社長の方が惚れてそうな雰囲気だったけど」
いや、だから。どうしてそんな風に見えているんだ。今はともかく、最初は本当にただの偽装だったのに。
「そんなわけないから」
「そう? 私結構、人のそういうの見抜くの得意なんだけどなあ」
言われて思い出すのは、結婚前、私たちが付き合っているんじゃないかと彼女が勘ぐっていたことだった。
つまり、当てにならないということでは?
「ベタ惚れとかはまあ、大げさな言い方かもしれないけど。最初から瀬名社長はいずみさんを見る目は他の人とはちょっと違うって思ってた」
彼女が自信たっぷりにそう言い切るので、たじろいでしまった。なんだか、このまま彼女のペースで話をしていると、自分の悩みが「贅沢な!」と一言で片づけられそうな気がしてきた。
結婚生活に自信がない、なんて。