離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「もしかして倦怠期? そんな風には見えないけど……どっちかというと、いずみさんの方がクールですよね」
「クール?」
寧ろぐいぐい来られて戸惑っている。自分のどこがクールなのだ、実際にはただ慌てふためくだけで、情けないといったらない。
「社長って時々、結構感情的な目でいずみさんのこと見るのよ」
「それは気のせいだと思う。そういうの会社で見せるタイプじゃないし」
というか、倦怠期も何も私たちは偽物夫婦なのだから、本当は何一つ始まってもいない。
「えーっ、そうかなあ。最近いずみさんも、ちょっと雰囲気変わってきたからきっと仲良いんだなって思ってたのに」
……変わってきた。
端から見てそう思われるような顔を、私はしているらしい。ふと頭に浮かんだのは、先日の街の散策の時の、自分の気持ちだ。
とても穏やかで、それでいて少しドキドキしていた。その時、私はどんな顔をしていたんだろう。私を見る目は、優しかった。和也さんの目に、私はどんな顔に見えていたのか。
「いずみさん。顔赤い」
「……酔ったかな?」
指摘されなくても、顔の熱で十分わかる。ぱたぱたと手扇で風を送って冷やしながら誤魔化した。まあ、誤魔化したことはきっと佐伯さんにもわかっている。
「……こういう気持ちって、ずっと続くにはどうしたらいいのかな」