離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

「……か、わ」
「可愛いって私が思うので社長はもっと思っているかもしれないね」


 にやにやと笑う佐伯さんを軽く睨んで、私はグラスに口を付けた。


 変わらないものはない、という言葉は漠然とした不安を呼ぶ。だけど、どう変わっていくか、と言った佐伯さんの言葉には、小さな気づきがあった。

 どんな関係も、いずれ変わる。だからいろんな夫婦がいる。早々に寄り添うことを諦めた両親のようなのもいれば、ひとつの空間に居てふたりでセットみたいな空気を醸し出す、あの喫茶店の老夫婦のような人たちもいる。


「夫婦だからってだけで、永遠に愛情があると思うのもまた傲慢な話よ。やっぱりどちらも努力しなくちゃ」


 ふたりで思うままに語りつくし、佐伯さんがそう力説した頃、その目は座っていた。


「努力した上で背中向けられたら、立ち直れるかしら……ああ、だから結婚より離婚の方がエネルギー使うっていうのかな」

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