離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
離婚予定日直前ー妻、敵前逃亡するー
 日曜、約束どおりに袋煮を作ることになった。最初は土曜にと思ったのだけれど、急遽和也さんに出かける予定が入り、日曜に変更した。

 別に、私が作って保存しておきますけど……。
 そう言ったのだけれど、和也さんは一緒に作って一緒に食べると言って聞かない。そしてもちろん、滝沢さんも呼ばなかった。

 ふたりでキッチンに立つと、それはもう新婚夫婦感が満載で、和也さんがこれを狙っていたのはすぐに理解した。
 袋煮を鍋でくつくつ煮込む。お玉ですくった煮汁を小皿に入れて味をみて、すぐ近くに寄り添う和也さんを横目で睨んだ。


「後は煮込むだけなんですから、座って待っててくれたらいいのに」
「俺も味見したい」


 小皿に煮汁を少し足して、和也さんに差し出すと彼は私の手の上から自分の手を重ねて口元へと持っていった。


「ちょっと薄い?」
「しばらく煮込むと濃くなるので、これくらいです。でも、やっぱりおでんみたいにいろんなものを一緒に煮込んだ方が味はいいかもしれないです」


 照れくささを押し隠して、小皿と自分の手を和也さんの手から取り戻す。

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