離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

 甘く豹変した和也さんとの時間は、慣れない最初は居心地の悪さを感じた。だけど一度慣らされてしまったら、もう抜け出せなくなるんじゃないかと思えてくる。

 誰かに、言葉じゃなくても熱心に好意を向けられることは、とても贅沢なことだ。男の人と付き合ったことはこれまでもあったけれど、そう思えたのは初めてだった。
 私って、ちゃんと恋愛したことがなかったのだろうか。とさえ思うようになってきて、それはそれで過去の自分が情けない。

 そんな風に、和也さんに甘やかされたり過去を振り返ったりしながら日は過ぎて、離婚予定日まであと一週間となった。


「社長、今夜の会食、延期にして欲しいそうです。先方のご家族様が、急遽入院されたそうで」


 執務室で社長のスケジュール変更を伝える。


「構わないが、大丈夫なのか? そのご家族は」
「元々の持病だそうで、深刻ではないとのことでした。入院の手続きと念のため顔を見に行きたいとのことでしたので。あとでお見舞いの品を手配しておきます」


 仕事中は秘書の顔。これまでは普通に出来ていたのに、意識するようになってからは逆に淡々とし過ぎて不自然なような気がしてくる。

 和也さんはわかっているのか、何も言わないけれど。


「……じゃあ、今夜は一緒に帰ろうか」


 時々こうやって、社長の仮面を取ってしまうことがある。

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