離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

「本来なら、普通に対応をお断りするところです。アポイントなしで会社に来るなんて、社会人のすることではありません。マリッジブルーのところ可哀想かと思いますが、ちょっとお説教をしておいてください」


 電話の向こうで、深いため息が聞こえた。


『ああ、そうする。悪い』
「社長が謝罪することではありません。今夜は、別々に外食にしましょうか」


 言ってしまった、その後味の悪さから逃げるようにそう決めて、通話を終了させた。腕時計に視線を落とすと、もうじき定時だ。
 どちらにしろ、麻耶さんに説教をするならおそらく食事をしながらの流れになるのだろうから、これで良かった。
 だけど。

 はあ、と重くため息を吐く。胸の中の澱みは一緒に出てくれなかった。仕事でもない、おそらく急用でもないのに会社にまで押しかけてくるのはおかしい。幼馴染じゃなければ、もっと容赦なくお帰りいただいていたところだ。結婚前、和也さん目当ての女性にそうしてきたように。

 その時は、こんな気持ちにならなかった。今だって、間違ったことは言っていないはずなのに、どうして嫌な気持ちが消えないんだろう。

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