離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

「滝沢、悪いけど麻耶頼む」
「は?」
「婚約者を呼んである。もうすぐ来るから」


 見上げた和也さんの表情は、酷く焦って見える。そして彼の後ろから初めて見る女性が私を見た。
 彼女が幼馴染の麻耶さんか。と、つい観察してしまう。確かに、ほっそりはしている。が、やつれているという風には、見えなかった。


「は? え? 婚約者って麻耶ちゃんの?」


 滝沢さんの困惑した声が聞こえる。


「その人、誰?」


 彼女が私を見たまま尋ねる。その声に間髪入れずに返事をしたのは、和也さんだった。


「俺の大事な人だ。旦那が迎えに来たら帰れ」


 麻耶さんが驚いたように目を見開いた。滝沢さんも驚いていた。私も驚いた。


「行こう、いずみ」


 そう言って、私の手を掴み歩きだす。引っ張られながら私はいまだ、驚いていた。

 ……大事な人って何。大事だと思っているのに、黙って女の幼馴染に会いに行ったりするのが男なのか。

 ぷちっと頭の中の何かがキレた。何かはわからないが多分、それが堪忍袋の緒というやつだったのかもしれない。


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