離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
離婚予定日直前ー夫は妻に会いたいー


 長い付き合いではあったけれど特別な関係などではなく、単なる幼馴染で随分長いこと会っていない相手だということを、いずみには前もって説明した。
 もうすぐ結婚する予定なのだが、マリッジブルーでちょっと不安定な様子だということも言っていたから、気を使ってくれたのだろうとは思ったが、本当にまったく気にしていないようにも見えた。
 実際に、過去には多少懐かれてはいたが恋愛感情に発展するような出来事も何もなかった。


「いいですよ、私のことは気にしないで」


 いずみと一緒に居る時の麻耶からの電話、三度目の時だっただろうか。ため息をついてしばらく放置していると、彼女はけろっとした表情でそう言った。

 逆に、どうして取らないのだろうと不思議そうにさえ見えた。話をしている間、特に気にするような素振りもなく、キッチンへと洗い物を片付けに行く。その時に、僅かに寂しく感じた。

 ――まあ、実際、勘ぐられるような相手でもない。

 懐かしさ以外のなんの感慨もないことが、いずみにも伝わっているのだろう。そして元々彼女は、とてもクールな女性だった。

 近頃は、ようやく頬を染めて赤くなったり怒ってみたり、照れるような仕草を見せてくれるようになったのだ。彼女はちゃんと俺を男として意識し、気持ちを寄せて来てくれている。
 それだけで、今は十分なはずだ。過度の期待をしてはいけない。そう自分に言い聞かせながら、彼女の後姿を見つめた。 
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