離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
待ち合わせのカフェに向かうと、既にふたりはそこにいた。麻耶を見るのは学生の頃以来だ。
「和くん! 久しぶり!」
窓際の席で、立ち上がってこちらに向かって手をふる。昔に比べ、随分ほっそりしたなと思いながら、俺はすぐに麻耶から視線を外し向かいに座る男に目を向けた。
彼は、俺が来たと気づいて席を立つ。ノンフレームの眼鏡をかけた、真面目そうな人物だ。彼はこちらに向けて、ゆっくりと腰を折る。
「初めまして、弓木と申します」
「初めまして、瀬名です」
互いに目を見て名乗る。それから彼は麻耶の隣に座ったので、俺はさっきまで彼が座っていた場所に腰を下ろした。
「嬉しい! 懐かしいね、学生の時とあんまり変わってない! あのね、高校生の時にすごく仲が良くて……」
「そうなのか」
穏やかな顔で麻耶の話に相槌を打つ弓木さんは、俺と同年代くらいだろうか。
「ね! 和くん懐かしいね!」
「ああ、そうだな」
一瞬だけ目を合わせて適当に流すと、再び麻耶の婚約者だという男を見る。笑顔は浮かべているが感情まではわからない。が、彼は目を伏せ俺に向かって頭を下げた。