離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
滝沢といずみに追いついて、そのふたり並んだ姿に嫉妬して。少々乱暴に、いずみを連れ出そうとした。
だけどそれよりもずっとずっと、強い感情を向け俺を拒否したのはいずみだった。
「約束の日に話します。予定どおりです」
秘書の微笑を張り付けて、いずみは淡々とした声でそう言うとタクシーに乗った。走り出す前なら止めることも出来たかもしれないが、今はもう何を言っても無駄だろうとそのまま見送る。
ちゃんと説明しておけばよかった。彼女がまったく気にしていないだろうなどと、どうして思ったのか。
素直な感情を表に出せるような人ではないとわかっていたのに。嫉妬してくれていたのか、と僅かに浮かぶ喜びと即座にそれを打ち消すくらいの後悔が押し寄せる。
傷つけてしまった。涙はなかったけれど、全身で泣いているように見えた。自分の浅慮が彼女を泣かせたのだ。情けなくて、両目を片手で覆い脱力する。
「……瀬名」
振り向くと、滝沢が申し訳なさそうな顔でそこにいた。後ろには麻耶もいる。