離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
その翌日、今度は仕方なく業務時間中、スケジュール調整の連絡をしに執務室に来たいずみを呼び止め手首を掴んだ。こうでもしなければ、今の彼女はすぐに部屋を出て行ってしまう。ここでなくても出来る仕事は、全部事務方のオフィスでやるという徹底ぶりだった。
「……今は業務の時間帯ですが」
はりついた笑顔が恐ろしく冷たい。
「そうでないと、話もさせてくれないだろう」
「お話は予定日にお伺いしますと言いましたが」
頑なな態度に、どうしても焦りが出てしまう。
「離婚届を持って?」
思っていたよりも大きくはっきりとした声で言ってしまい、慌てたのはいずみだった。急いで背後を振り返り、扉がきちんと閉まっているのを確認する。
「大きな声で、やめてください。人に聞かれたらどうするんですか」
「……いずみが、離婚すると決めているならどうせそのうち知られることだ」
「だからといって、執務室で痴話げんかなんて噂が立つのは困ります」
そう言いながら逃げようとする彼女を引き留めたくて、強く手首を握ってしまう。痛いかもしれないと気づいて、すぐに緩めた。
すると彼女が、困ったような顔で俺を見上げた。ずっと秘書の顔しか見ていなかったから、たったそれだけのことでもなぜかほっとしてしまう。