離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「……話は、来週火曜でいいじゃないですか」
「その日に別れると決めているとわかってて、足掻くことも許してくれないのか」
謝罪も説明も弁解もさせてもらえないのでは、正直どうしたらいいのかもわからない。バツが悪そうに視線を逸らす彼女を見て、わざとそうしているのだと理解してしまった。そのことを寂しいと思ってしまう。だけどそれほど彼女を頑なにしてしまったのも、俺のせいだ。
「土曜日は、幼馴染に会いに行ったんじゃない。彼女の婚約者も交えて、今後は連絡はしないでもらいたいと話に行ったんだ」
そう言うと、彼女は少しだけ目を見開いて俺を見た。それで勢いづいて、続きを話そうとする。
「説明せずに悪かった。すまない。いずみのことを決めつけて……」
「いえ、いいです。そうじゃなくて」
結局また彼女は俯いて、それからさっきほどの冷ややかさはないけれどまた硬い微笑みを浮かべてしまう。
「和也さんだけが悪いとか、そういうことじゃないの。自分が変わってしまうことに、私が耐えられないなって思うだけです。それならひとりでいる方が良い。臆病ですみません」
一瞬、どう答えていいのかわからなくなった。ただただ、自分の不甲斐ない部分を謝るだけではダメなのだ。彼女が求めているのは、そういうことではない。
そして今、こうと決めたらテコでも動かない状況だということも。今は会っても無理だと佐伯さんが言っていた、そのとおりだった。
「……わかった」
本当は少しもわかっていない。だが、そう言うしかない。
ほんの少しだけ彼女が悲しそうに微笑んだ。それを、一縷の望みに繋ぐ。俺も、彼女に微笑み返した。
「……わかったよ。君の意思を尊重する」