離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「瀬名と幼馴染のこと……いずみさんが、誤解するような、言い方を……」
「誤解?」
続いた言葉を聞いても、やっぱりよくわからない。だけど、気まずそうな顔を見ていると、こちらの方がなんだか気の毒になってくる。
「瀬名が麻耶ちゃんのことを、特別可愛がってたとかはないんだ。本当に、気にしないで……大丈夫だから」
「え……でも」
幼馴染と特別な関係ではないということは、私も十分わかっているつもりだ。頼られたら断れない性格なのも承知している。
かといってそれで感情は解決してくれない。そういう話なのだが。
「万が一、って考えて、こすいことした。悪い」
「……あの。よくわかりませんけど、後は私と彼の感情の問題ですから。滝沢さんのせいじゃありません。ご心配いただいて、ありがとうございます」
滝沢さんの言いたいことをあまり理解できないまま、とりあえずそう言って笑う。それでも彼はやっぱり何か言いたげだったが、結局これでこの話は終了ということにしたようだ。
「いや、もう、余計なことは言わない。瀬名にも言われたし。ほんとにごめん、それだけだから」
ごめん、と両手を合わせるジェスチャーをしながら、逃げるように去っていく。それをぽかんと見送ってから「あっ」と気が付いた。
「……昨日、あれからどうなったか聞けば良かった」
何もかも放棄して逃げ出したので、その後のことをそれとなく聞きたいと思ったのに。何せ、和也さんから聞く勇気はないので。