離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

 できるだけ物音を立てないように、寝室からトートバッグを回収した。静かに部屋をでる。エレベーターの中でスマートフォンをチェックすると、佐伯さんからメッセージが来ていた。


「あっ! しまった……」


 話し合いが終わったら帰ると約束していたことを思い出したのだ。しかしメッセージの内容を見て気が抜けた。


『いずみさんの荷物、宅急便で送ろうか? 取りに来る?』


 私が帰らないと、彼女は最初からわかっていたようだ。そのメッセージが入っていたのが、昨日の夜のうちだ。そういえば、和也さんと通じていたんだった。

 またお礼も兼ねて荷物を取りにいくとメッセージを返信して、マンションの外に出た。穏やかな良いお天気で、気持ちがいい。

 平日昼間のスーパーは、空いていて買い物がしやすい。和也さんに何を作ろうかと考えながら回っていると、ゆっくり見過ぎて思いのほか時間が過ぎていた。
 しかも、予定外に大荷物になってしまった。こんなにも時間を気にしないでいられる平日、しかも向こう一週間。時間に追い立てられずに食事を作ったりできる状態がしばらく続くのだと思うと、ついついあれもこれもとメニューが頭に浮かんでしまったのだ。

 しかも、ひとりじゃない。私は、自分で思うより浮かれているらしい。


「おっもい! しまったぁ……」


 大き目のレジ袋ふたつ分、それと小さめのがひとつ。小さい方を利き手側の腕に通してひっかけ、大きい方を両手にひとつずつぶら下げる。しまった、やっぱり和也さんと来るべきだったかもしれない。
 どうにかマンションのエントランス前まで来たときだった。

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