離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

「ああ、しまった。オートロック……」


 この荷物を持ったままで、ロックを解除するのは不可能だ。地面に置くのはなあと悩んでいると、マンションの出入り口が中から開く。
 ラッキーだ、と思って顔を上げた。


「あっ、和也さん。ちょうどよかった……」


 出て来たのは和也さんだ。助かった、と思ったがその表情を見て私の語尾が小さくなる。悲壮な表情が、私と目があって驚いたように固まった。


「どうかしたんですか?」


 会社で何かトラブルだろうか? とても慌てて出てきたような様子だった。しかし、格好は今から会社に行けるようなものではない。シャツとジーンズというラフな服装で、しかも髪は寝起きのまま乱れていた。


「……いずみ」
「はい?」


 悲壮な顔は、見つめ合ううちにぽかんとしたものになって、それから視線が下がる。私の手にある荷物を見た。
 はああ、と深いため息とともに肩が下がって、彼が手に握っていた車のキーを後ろのポケットに押し込む。ふっと私の手にある荷物が軽くなった。重いふたつを、和也さんが持ち上げてくれていた。


「買い物に行ってたのか」
「はい。……あ、ごめんなさい。書置きしておいたら良かったですね」


 そう答えながら、もしかして探しに出て来たのだろうかと彼の横顔を見上げる。しかしすぐにくるりと入り口の方へと向きを変えて、表情は見えなくなった。
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