離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

 私だけではなく誰だって、不安になったり心配したりするのだと、改めて気づく。その度、私のように逃げたり逆に感情をぶつけたり、いろんな形で人はすれ違ってしまう。そういうことは、どこの夫婦にでも等しくあることなんだろう。そうして寄り添うことを諦めてしまった夫婦を身近に知っている。

 だから、和也さんの言葉は私にとってはとても現実的で、どんな甘い言葉よりも嬉しかった。

――これから先いろんなことがあるだろうけど、それも全部、いずみが好きだから、ふたりで乗り越えたいと思う。だから、俺の本当の妻になってくれないか。


 いろんなことがあるだろう。それは避けられない。だけど何があってもふたりでいたいと彼は言ってくれた。
 ずっと未来にも、彼は私の隣にいてくれる。そうしたら、いつか私たちもなれるだろうか。同じ空気をまとって末永く寄り添う、あの喫茶店の老夫婦のように。


「……強引なことをしたから、本当は嫌だったのかとか」


 ようやく気を持ち直したらしい和也さんが、そう言いながら私の首筋にキスをした。何度も何度も、啄むように。
 そのくすぐったさに目を細めながら、思う。確かに強引だったけれど。あれは、閉じこもって出てきそうにない私を引っ張り出すためだ。
 それに結局、ちゃんと私の気持ちを聞いてからにしてくれた。

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