離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
――服はすっかりはだけて、それでもかろうじて着衣のままであるのが尚更恥ずかしいけれど、今は整える気力もない。ぐったりとして動けない私を胸の上に寝かせた状態で、和也さんはソファに寝転がっている。片腕でしっかりと私を抱いて、もう片方の手にはスマートフォンがあった。
「傷心旅行なんてつもりは最初からなかったが、一週間もあることだし旅行もいいな」
その結論、もう少し早く欲しかったです。
「いずみはどこか行きたいところはある?」
私を抱いた手で優しく肩を撫でながら、聞いてくる。
「そうですね、癒されるところがいいです」
「じゃあ、温泉かな」
癒されたい。いや、身体を休めたい。そんな願望から即答した私だったが、ご機嫌で検索を始めた和也さんに、そこはかとなく不安になってくる。
――本当に、休めるだろうか? いや、まさか、旅行先でまで、そんな。だけど余計に、色っぽい雰囲気になったらどうしよう。
嫌な予感がひしひしと押し寄せて来て、私は慌てて顔を上げた。
「あ、やっぱり。旅行よりもゆっくり、ちょっと外の空気を吸いたいです!」
「遠出は今からじゃ準備不足だしな。だけど、それほど時間かけずに行ける温泉街もあるぞ」
いや、温泉から離れたい。温泉イコール色っぽい雰囲気という数式が出来上がってしまっている私に、和也さんがスマホの画面を見せてくる。
そこには都心からほど近い、温泉地の旅館のリストが並んでいた。
「あ……」
その地名に、はっとする。思わず声が漏れたけれど、それ以降言葉が続かない。