離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
そこは、今、母が住んでいるはずの場所だった。父と別れた後、親戚を頼ってそこに移り住んだと聞いた。電話で聞いただけで、実際には全く知らないのだけど。
「いずみ?」
和也さんが、不思議そうに私の顔を覗き込んでくる。別に、その地に行ったからといって必ず会う必要はないのだし、会わずに帰ったとしてうしろめたく思う必要もない。
わかっているのに、私はなぜか動揺してしまっていた。
「……そこは行きたくない」
静かな声で、だけどストレートにそう言った私に、和也さんは驚いたように目を見張る。だけど、それきり黙って和也さんの胸に顔を伏せた私に何か問いかけてくることもなく、黙って背中を撫でてくれていた。