離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
 この二日、ただ濃厚な接触ばかりをしていたわけでもなく、真面目な話もした。そのうちのひとつが、親への挨拶だった。
 和也さんの実家には、近々挨拶に行くことになっている。三年前から既に結婚していた、というのは伏せておいて、ただお互い忙しいので婚姻届けだけ先に提出したと口裏を合わせる予定だ。

 私の方は、父にも母にも必要ないと言った。和也さんは私が親に会いたくないと思っていることに、多分気が付いただろう。

 今の言い方も、そのつもりはなかったけれど、思わせぶりに聞こえたかもしれない。それに、本当の夫婦になるのなら、家族のことも話すべきだろう。
 隠し事をされたくない、と私自身そう言ったのだし。私がそれを破るわけにはいかない。

 和也さんの胸元から伏せていた顔を上げると、背中を撫でていた手が止まる。こんなことを言えば、何を子供じみたことをと笑われるかもしれない。それが気まずく、眼を逸らしながら言った。


「母が住んでるとこなんです。だからあまり近寄りたくなくて」
「ああ、そうか」


 返ってきたのはそんなあっさりとしたものだった。それ以上何か言うこともなく、代わりに背中を撫でる手が再開する。視線はまたスマートフォンの画面に戻って、どこか別の場所を検索しているらしい。
 私はなんだか拍子抜けして、よいしょと彼の身体の上から起き上がった。はだけた胸元を整えると、私から問いかける。


「聞かないんですか? 普通、結婚したことを親に報告しないなんて変に思うでしょう?」

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