離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす


「可愛げがないから」
「えええ」


 意味が分かりません。


「家の中で、秘書の顔をするな。職場にいるような気になる」


 いや、でも。確かに今は家だけど、話の内容は仕事に近いはずだが。
 バツが悪そうに目をそらした彼は、やっぱりなぜかわからないがとってつけたような文句をつけた。


「はあ……ごめんなさい」


 本当にそれが理由でデコピンをされたような気はしないが。とりあえず謝っておく。積極的に私の新居を探すと言ってくれているしこれからも上司だし、逆らってはいけない。


「じゃ、そういうことで」


 機嫌が悪くなったし秘書の顔をしなくていいなら、もういいかなー、と席を立つことにして話を切り上げた。
 レーズンバターサンドの箱をテーブルから持ち上げようとしたら、中の個包装をいくつか大きな手がさらっていく。


「あっ! そんなに!」
「久々に食ったら美味かった。代わりに美味い酒奢ってやる。今夜は暇か?」


 和也さんの言葉に、きらんと私の目が光ったのではないかと思う。彼はお菓子で機嫌を直したらしい。もう笑っていた。
 それで少し安心した。いつもの彼に戻ったようだ。


「暇です。じゃあ久々に飲みますか?」
「取引先からもらったブランデーがある。飯はどうする?」
「酒の肴になりそうなの作ります!」


 どうやら今夜は久々の宅飲みになりそうだ。

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