離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
何戦目まではっきり意識があっただろうか。
確か、五戦目は結局負けて、七戦やっても私の負けが確定になった。もう一勝するまで付き合って欲しいと絡んだ時には、かなり出来上がっていた気がする。
気が付いたら、ベッドで横になっていた。どうして気づいたかっていうと、ぎしりとスプリングの軋む音がしたからだ。
いつのまに、部屋に戻ってきたんだろう。胸がもやもやとして大きく息を吐いたら、アルコールの匂いがした。
薄く目を開けたが、視界がなんだかはっきりしない。寝ているのにぐらぐら揺れているような気がして、小さくうめき声を上げた。
「……う、ん」
しんどい。もう、このまま寝てしまおう、と再び目を閉じる。すると、額に何かが触れたような気がする。
額から前髪へと撫でられて、誰かの手なのだと気づく。誰かって、一緒にいたのは和也さんだから、きっとそうなのだろうけど。
何せ、酔っ払いにはそんなことを考える思考力も残っていない。
髪の中に入り込んだ指に地肌を撫でられて、それがとても心地よくてあっさりと夢の中へ浚われた。
最後に、深い深いため息と、声を聴いた気がする。
「……最低だな。酔わせてどうしようってんだか」
自嘲するような声だったけれど、その言葉の意味を考えることもなく私は眠りに落ちてしまい。
朝起きた時には、記憶はとても曖昧になってしまっていた。