離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
広々としたワンフロアをパーティションでいくつかに区切ってあるオフィスで、その中の一角、来客ブースのような場所で待っていると慌てた様子で現れた人物。
長めの前髪が、左よりの分け目を中心に軽くかきあげられ、ワックスで整えている。急いで来たからか、一筋はらりと落ちて目にかかっているのが、色っぽい。
すらっとした長身に広い肩幅、長い手足。それらをブース内に滑り込ませて、名刺を差し出すその瞬間、まっすぐとした綺麗な背筋が印象に残った。
「待たせてしまって申し訳ない」
低くて耳に心地よい声。
その時、私が思ったことは。
――歩くセックスアピール、健在。
大学時代の彼がなんと呼ばれていたのかを思い出して半目になる。もちろん、すぐに取り繕ったけれど。
瀬名和也。百八十センチはゆうに超えてるんじゃないだろうか、その長身が大学内を歩くと男女問わず視線が集中した。まあ、好意的な視線は圧倒的に女性のものが多かっただろうが。
シャープな顎のラインに切れ長の目、堀が深く整った顔立ち。人好きする笑顔と気さくな人柄で、男女問わず慕うものが多い。
それに加えて、一挙手一投足毎に周囲に振り撒かれるような、溢れる色気。入学したばかりで、つい先日まで女子高生だった私から見ると、画面の向こう側にいる芸能人のような存在感だった。