離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
離婚予定日二か月前
◆◇◆


 離婚予定日の再確認をした日から、一カ月が過ぎた。

 ……おかしい。何がおかしいって、色々とあるけれど、まるっとまとめて共通点を挙げて言うと、和也さんがおかしい。


「お疲れ様です、いずみさん」
「お疲れ様です」


 オフィスを歩くと、社員たちから声がかかる。私と社長が結婚してから、みんな私のことは下の名前で呼ぶようになった。社長も私も瀬名になったから、呼びにくいのだろうと思う。
 離婚することを考えて、最初から夫婦別姓にしておくという方法もあった。だけど私たちの結婚は社内外にわかりやすく伝わる方が、都合が良かったのだ。


「SE組は残業? あまり遅くならないようにしてね」


 そう声をかけて、オフィスを後にする。出来るだけ無理はさせないように、納期は余裕をもってスケジュールを組むようにというのが社長の和也さんの方針だ。
 誰もがそれを気兼ねなく実行できるように、意識して再三社長から指示がいくようになっている。が、クライアントとの兼ね合いもあるので、なかなか難しいこともあるだろう。

 それでも、エンジニアの社員から話を聞けば他社よりは随分楽だという。
 その辺りのことも、この数年で和也さんが力を入れてきた成果のひとつだ。

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