離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

 仕事の付き合いがあっても、いつもより帰りが早い。これまでは、毎日というわけではないけれど、夜は会わないで朝になったら帰っていて夫婦の顔で出勤する、というのが多かった。

 まあ、原因には私が九時過ぎには就寝してしまう、というのもあるけれど。子供みたいだとからかわれた時には「頭を使う仕事だから睡眠時間は大事なんです」と言い返した。
 実際寝不足だと頭回らないと思う。

 ところが、だ。九時までに帰って来て、先日はお土産なんかも買ってきてくれた。
 寝る前に、なぜかふたりでアイスクリームを食べていた。私はお風呂も済ませたパジャマ姿で。


「ふふっ」


 馴染みの飲み屋に歩いている途中で、不意に思い出し笑いをしてしまう。


「何? どうかした?」


 隣を歩く滝沢さんが不思議そうに尋ねてくる。


「いえ、ちょっと思い出し笑いです」


 三年も一緒に暮らして、こんなことなかったなとちょっと変な気分だった。結婚生活の思い出といえば、本当に晩酌とリバーシくらいだ。
 それだって休日にたまたま、どちらも自室にこもらずリビングに出て来た時に、場持たせみたいに始まったのだ。


「あー、そういえば」
「はい?」
「もうじき、予定日だよな」


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