離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「瀬名に?」
「はい。一応、知らせておこうかと」
「大丈夫じゃないか? あいつの方が遅いだろ、いつも」
「そうなんですけど、最近ちょっとお帰りが早くて。付き合いも楽になってきたんでしょうか」
彼の付き合いは人脈作りがほとんどだ。だけど、会社が安定してきた以上、もう以前ほどには必要がなくなってきたのかもしれない。
これで彼も少しはプライベートに余裕が出来ればいいのだけど。
一緒に暮らしたからこそ、彼がどれだけの時間を会社のために費やしてきたかを知っている。
和也さんももう三十になるのだし、彼自身の時間をこれから大事にするべきだ。
頼んでいたビールがふたつと、お通しが運ばれてくる。グラスをそれぞれ手にして軽く合わせると、滝沢さんがさっきの話をぶり返した。
「それにしても、三年は長かったな」
「そうですねえ、でも案外あっという間だったかも」
喉が渇いていたので、半分ほど一息に飲んでしまった。それからお通しを軽くつまみながら、注文した料理が来るのを待つ。
白和えを箸でつまんで口に運ぶと優しい味が広がった。
「ちょっと寂しい感じもします」
お母さんの味的なお料理で感情も刺激されたのか、なんとなくそんな気持ちになってそう言っただけなのだが。
「え、離れがたいとか?」
滝沢さんが驚いたように反応したから私も驚いた。