離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「いいな。食いたい」
「えっ」


 また隣を見れば、和也さんもまたこちらを向いていた。しかも何か、明らかに期待されている目で。
 いや、なんで、人のひとりごとをいちいち拾うの。仕事の話をしているならそっちに集中しなくていいのか。しかも。


「いつ作る?」


 そこまで考えて呟いたわけではないのだ。多分、素面の時に思い出して、材料があったら試しにしてみようかなくらいのノリだ。
 それなのに、何か一緒に食べる気満々の問いかけがやってきた。

 嫌というわけではないのだが、やっぱりこの頃おかしい和也さんが、現在進行形でおかしい。

 和也さんを通り越して滝沢さんを見れば、彼もちょっと驚いたような顔をしている。これまで三人一緒の時でも、こんな風に生活を感じさせるような会話をしたことはなかったからだと思う。


「いつ、とかは考えてなかったですが。じゃあ、今度宅飲みするときにでも」


 多分これが無難な回答だろう、と口にした。和也さんは、満足げに笑い目を細める。
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