離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

「タクシーに乗るか」


 店を出て駅に着くと、滝沢さんとは別れて私たちはタクシー乗り場へと歩いた。人も少なくて、タクシーも頻繁に来ては出ていくのでそれほど待たずに済みそうだ。
 案の定、数分ほどで順番になり、乗り込んだタクシーの中で私は小さな冊子を開いた。すると、すぐに和也さんが覗き込んでくる。


「なんだそれ?」
「不動産屋さんの広告冊子です。さっきのタクシー乗り場に何冊かぶら下がってて」


 離婚予定日まで、もう後二か月だ。和也さんが責任をもって探すと言ってくれたけれど、あれからもう一カ月。
 探してくれているのだとは思うのだが、あれからさっぱりその話にならない。仕事も以前に比べて余裕が出来たとはいえ、忙しいものは忙しい。きっとままならないのだと思う。


「そういう印刷物の情報はもう遅いんじゃないか?」
「ネットの方が多分一番情報としては最新ですよね。でもまあ、なんとなく、あったのでつい。家賃の相場とか、次住む場所の見当とかできればいいかと思いまして」


 ぱらぱらとめくりながら、物件の駅名を基準にして気になるところで手を止める。やっぱり、どうせ住むなら便利な駅がいい。

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