離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「……は?」
「その点、富樫さん、面接で瀬名の顔見た途端眉しかめたらしいじゃん。珍しい反応だったって面白がってたよ」
「……それって、今までの人員が社長に懸想して仕事にならなかったってことですか?」
「懸想って。富樫さんほんと面白いね」
面接の日、取り繕ったつもりだったけれど、瀬名さんのキラキラしい外見に一瞬「うっ」となったのを気づかれていたらしい。
「まあ、そういうわけで女性事務員の採用には、慎重になっててさ。前任の推薦なら問題ないだろうって」
なんて理由だよ、さすが歩くセックスアピール。
彼の二つ名の威力を再確認する。同時に、この仕事を持ち掛けてくれた時に、先輩が言った言葉を思い出した。
『いずみなら大丈夫でしょ、そういうとこクールだし』
そういう点で先輩は私を紹介してくれたらしい。複雑だけど、いまいち謎だった採用理由がわかって若干すっきりした。
クール、とはよく言われる。別に恋愛に興味がないわけではないのだけれど、そこまでのめり込むだけの情熱が私にはわからない。
会社の上司に恋したらだめでしょう。仕事第一、世の中働いてなんぼなのだから、恋愛が破綻したときにその基盤が揺らぐような相手と恋愛するのは間違っている。