離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

「子供いるのにこんなハードな仕事は無理だって言ってたかな」
「ですよねー。なんだかもったいないですね」


 ふと先輩のことが気になって滝沢さんに聞いてみたら、やはり戻ることはなさそうだ。大丈夫なのかなあ、といらぬ心配をしてしまう。先輩、バリバリ仕事出来る能力があるのに。

 今は共働きの家庭は多い。女でも母親であっても、いやだからこそ、自力で稼げる勤め先は確保しておきたい、と私なら思う。
 つい『万が一の時の為のルート』を確保しておく思考回路になっている。


「まあ、相手が結構大手の会社勤めてるしな。安定してるし」
「本音を言えば、私としてはぜひ、出産後戻ってきていただいて……いやそれまで待てないのでやっぱひとりは増やして欲しい、切実に」


 パソコンの扱いは得意だし書類作成や入力作業の正確さとスピードには自信があったけど、次から次へと仕事が回ってきて一日中追われてしまう。
 本当にデキる人間なら、そこで本来の秘書業務に支障を来たしたりはしないと思う。が、私はとてもじゃないが手が回らずにいた。


「あー……そうだよな。ちょっと瀬名と相談しとくか」


 滝沢さんが、頭を掻きながら眉尻を下げる。
 くやしい。先輩はちゃんと熟してたんだろうか。


「む……」


 自分の未熟を棚に上げて、社会に出たばかりのペーペーが文句を言って良いわけなかった。


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