離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
離婚予定日まであと1.5か月ー和也sideー


 ――三年は、長かった。
 
 彼女を秘書に雇って、まったくなよなよしていない、寧ろ男よりも男らしいんじゃないかと思うくらいにサバサバした性格を気に入った。

 言葉遣いが男っぽいとかではない。秘書として綺麗な言葉遣いをする。伸ばした背筋は凛として見えて、身体全体はほっそりと華奢な方だろう。
 飾り気はないが化粧も髪型も清潔感があり、好感度は高い。ただ、何をするにも言うにも、どことなくさっぱりとしていて、職場において『女』というものを一切感じさせない人だった。

 ――どうぞカモフラージュにでも虫よけにでも、なんにでもお使いください。

 社内で噂が流れた時、女避けについ利用してあえて修正しなかった。そんな時も、彼女はからりと笑ってそう言ったのだ。本当に、どうでもいいと思っている様子に心の底から可笑しかったし、興味を引かれた。

 彼女を、とても気に入っていたのだ。純粋に、秘書として。だからこそ、あんな形で彼女の戸籍を汚してしまうことが、本当に申し訳なく、情けなかった。自分に力がないことが、数年経営者をやってきて大した後ろ盾も得られていない自分が腹立たしかった。
 
 ――ただの業務ですから、お気になさらずに。
 婚姻届けを出す日、彼女はやはりいつも通り秘書らしいスーツで、綺麗にすました顔と礼でそう言った。

 ならば、せめてその三年間は徹底して距離感は保つべきだ。帰宅してまで上司と顔を合わせるのも面倒だろうと最初は別居婚も考えたのだが、どこで誰が見ているかわからないのだから一緒に住むべきだと言ったのも彼女だ。

 ……本当に、どこまでも『業務』でしかない。彼女らしいと思った。

 仕方なく、家での接触は出来る限り避け、平日の夜は仕事の付き合いを詰め込んだ。
 いくら向こうから申し出てくれた実質上はルームシェアとはいえ、彼女が安心して暮らせるよう環境づくりは必要だ。
 最初の一年は、避けるように時間をずらして、朝食もわざと自室に持ち込んで摂っていたから一日一回出勤時間に顔を合わせるだけだったように思う。
 
 それが、少しずつ崩れたのは三年目に入った頃だろうか。
 ほろ酔いの彼女とリビングで居合わせて、なんとなく、仕事に関係ない他愛ない会話をしたのがきっかけだった。


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