離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
『なんで勝てないの……』
酔いが回って、負けが込んで、じきにいつもの敬語が崩れる。秘書として取り澄ました表情が消えて、素の彼女が現れる。そう気が付くと、いつの間にかその時間を楽しんでいる自分がいた。
力の抜けた様子を見せる彼女といるのが、心地よい。自分もいつしか、力が抜けた状態で彼女に接していた。
『負けず嫌いなところが、多分ネック』
『散々負けたから余計にそうなってるんです。和也さんのせいだから』
むっと唇を引き結んで、上目遣いでこちらを睨む。オフィスでは絶対に見られない表情だ。秘書としての彼女は尊敬も信頼もしているが、家でならたまにはそんな彼女を見たいと思う。だからつい、いつもこてんぱんに負かしてしまうのだが。
『だけど、わざと手を抜かれると余計に怒るくせに』
『それは当たり前ですー!』
もう! と悔し気な声をあげて、彼女がテーブルに突っ伏す。項垂れた細い首筋がほんのりと桜色で、そっと目をそらしてゲーム画面に向けた。
彼女に『女性』を感じた瞬間だった。