離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
『和也さん? どうかしました?』
『いや。なんでもない。契約後の話とは?』
不思議そうな顔でこちらを覗き込む彼女に、一瞬でいつもどおりの表情を取り繕った。離婚予定日に向けて、近々話をしようとは思っていたが彼女の方からこうもあっさりと切り出されるとは思わなくて、意表を突かれた。そして、そのあっさり具合に嫌な予感が頭を掠める。
彼女の話を聞きながら表情を伺い、様子を見てどうしたものかと考えた。
これは……今ここで急に彼女に好意を寄せていることを伝えても、もしくは離婚予定日をこの現状のまま迎えてから話をしたとしても、彼女が俺に靡く可能性は限りなく低いのではないだろうか。
『円満離婚したってことにして、周囲には和やかにしておきたいですね』
にこやかにそんなことを言われては、今まで意識していたのは自分だけだったかと思い切り失恋した気持ちにさせられた。
『それじゃあ、当初の予定に沿って、三年目の結婚記念日に離婚届を提出ということで。そろそろ引っ越しのことも考えないといけなくて』
まさに業務連絡のように話を進めていくいずみが恨めしくも思えてくる。