暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
正妃の存在は、国にとって重要な問題。
しかし、もう何年もそこは空席のままになっている。
大臣や官僚達がその現状に痺れを切らし、他国の姫や名家の娘を妃にと進めてきた事もあったが、
陛下はどんな言葉にも耳を貸さず『必要ない』の一言で片づけた。
―――…まぁ、前皇帝とは違って妃同士の争いがないだけマシか。
妃とは時には国をかき乱す原因にもなる。
前皇帝は女遊びが激しく、後宮には華美に着飾った沢山の女性達がいた。
その為、継承争いも激しかったわけで。
冷酷でなければ生き残れない。
ー……そう幼い頃に身を持って知ってしまったせいもあるのだろう。
圧倒的な武力で国土が拡大したのも、結果的に民の暮らしが良くなったのも。
この男が心を捨てて『血に染まった王』になってしまったからでは…と、友人として宰相として、ファンは思ったのだったー…………。